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中東を拠点に国際協力の分野で活動する佐藤真紀のオフィシャル・ブログ コメントはkuroyonmaki@yahoo.co.jpまで


by kuroyonmaki
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ラナちゃんの命日

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やわらかい服を着て

 2003年2月3日、皆さんの記憶からは、薄れてしまったかもしれないけど、イラク戦争がまさに始まろうとしていた時だった。
私はその当時何をしてたかというと、えらそうに、戦争反対を訴えてイラクに入ったのはいいとして、迫りくる戦争の重圧で、ストレスがたまり、帯状疱疹になって寝込んでいた。
イラクで病気になると、本当に「トホホ」という情けない気分になるのだ。
病院にいくと、「ただの感染症ですよ」と言われ、注射をしましょうという。
どう見たって帯状疱疹なのに、なんという「やぶ医者」だろう。
私は、注射を拒否して、街中に、特効薬といわれる「ゾビラック」を探しに行った。
町の薬局では、
「そんなもんないよ。イラクは経済制裁されてるからなあ。早く経済制裁が終わるように、お宅の総理に言ってくれ」といわれる。
おそらく、闇の市場には期限切れのゾビラックが出回っているんだろう。
疱疹があまりに痛いので、ホテルの食堂にあったオリーブオイルを塗ってみた。
イエスの時代の薬と言えばオリーブオイルだ。なんか聖書にもそういうのが書いてあったような気がした。
私は、キリスト教徒ではないけど、もうこれで死んでしまうのかと思うと、妙に頭がさえてきたりするのだ。
ただし、オリーブに変な雑菌が混ざっているといやなので、アルコールを買って、オリーブと混ぜて乳液を作った。
これが、結構効く。と言うよりは、自分のアイデアに自画自賛という感じ。
死の淵をさまよう私を励ましてくれたのは、白血病の女の子が描いてくれた一枚の絵だった。
それが、ラナちゃんが5日前に描いてくれた、日本の友達と手をつなぐ自画像。
よく考えたら、帯状疱疹では死なないそうだ。ちょっと我慢すれば言いだけの話。一方ラナちゃんは、白血病と戦っている。たった12歳の少女。
そう思ったら、自分が情けなくなってきた。
実は戦争が始まるまで、イラクに踏みとどまる覚悟を決めていたのだが、こんなんで、戦争になったらたまらんととっとと逃げることを考えた。まだ、飛行機はとんでいると言うから、2月12日に何とかイラクを脱出することにしたのだ。
日本でやることが山ほどあった。
ラナちゃんの絵をみんなに見せて、いかに今のイラクで病気の子どもたちが生きていくことが大変か!戦争が始まったら、こんな弱い子どもたちから真っ先に死んでいく。死ぬのはサダムではないんだと訴えた。
しかし、なんと言うことだろう、2月3日にはすでに彼女はこの世を去っていたのである。

 2005年、脚本家、演出家の永井愛さんが、イラク戦争とNGOをテーマにしたお芝居を作りたいと相談にこられた。私は、お芝居のことそっちのけでラナちゃんの話を熱く語っていた。
一年たって、「やわらかい服を着て」というタイトルで、新国立劇場で上演されることになり、そのときの主役が吉田栄作さん。吉田さんがイラク戦争に反対するNGOの大将という設定だ。吉田さんはまっすぐな人だ。ラナちゃんにささげる曲を自ら作って劇の中でも歌った。(CDにして欲しいなあ)
お芝居のなかで「ラナちゃんと約束したんでしょ。戦争は絶対止めるって」と新子に諭されるシーンがある。
この言葉にははっとする。約束が守れなかった自分がそこにあって、だから、今は、できるだけ多くの子どもたちを助けたいとJIM-NETを続けている。
今回は、無理をお願いして、吉田栄作さんに、絵にせりふをつけてもらった。お楽しみに。
「限りなき義理の愛大作戦」はまだまだ続く。チョコレートの一粒の甘さに子どもたちの命の重さを感じて欲しい。

ラナちゃんのチョコは、2月15日以降ホワイトデーに売り出す予定です。
by kuroyonmaki | 2007-02-03 17:27 | 007限りなき義理の愛大作戦