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中東を拠点に国際協力の分野で活動する佐藤真紀のオフィシャル・ブログ コメントはkuroyonmaki@yahoo.co.jpまで


by kuroyonmaki
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ハウラと一緒にチョコレートのデザイン

昨年、始めたサマーキャンプ。
バグダッドとバスラ、そして、サマワからも患者(サバイバー)を呼んだ。クルドの子ども達も一緒に絵を描いた。言葉は通じなくても、子ども達同士、一緒に遊んで楽しかっただろう。そして何よりも、ナナカリー病院は患者の生存率が極めて低い。両親は、子どもがガンになったと聞いて絶望してしまう。
ガンに打ち勝った子ども達の存在は希望である。サマーキャンプは親同士が交流し、情報交換したり、励ましあったりする大事な場所である。
残年ながら、今年は、サマーキャンプは中止せざるを得なかった。東日本大震災の影響で、とても準備が出来なかった。
しかし、チョコレートのデザインを7月中には仕上げなければならない。
チョコレートも7年目になる。毎年さまざまなコンセプトで、支援者を魅了してきた企画だが、津波と地震の後で、一体どんなアプローチができるのか。
僕の頭の中には何も残っていなかったし、考える余裕もなかった。つまりはそこまで消耗してしまったのだ。
 そんなある日、ハウラのメッセージをhpで見たという人が雑誌で紹介したいと言ってきた。
「イラクからみなさんへ  
 私は、地震の話を聞いて日本の皆さんのことが、とても心配になりました。
早く良くなるように祈っています。
皆さんのことを思って、たくさん「赤い花」の絵を描きたい。皆さんに赤い花を届けたいです。私の心はいつも日本の友人の皆さんとともにあります。」
ハウラ・ジャマル(15歳)
そうなんだ。ハウラが僕たちの為に絵を描いているんだ。
ハウラと一緒にチョコレートのデザイン_b0041661_227320.jpg

そこで、ハウラにアルビルにきてもらって、一緒に絵を描いた。
6月27日、朝から部屋にこもって、花の絵を描いた。
ホテルの庭に咲いているバラの花やハイビスカスの花を僕が摘んできて、写生を教えた。
水彩絵の具とアクリル絵の具の使い方を教える。最初は練習。でもだんだんとハウラの面白さが出てくる。午前の部が終了する。
ハウラと一緒にチョコレートのデザイン_b0041661_2232066.jpg

ハウラと一緒にチョコレートのデザイン_b0041661_2251376.jpg
ハウラには心配ごとがあった。がんの再発だ。母親も、「治ったからといって安心は出来ない。みんな再発して死んでいったから。」ハウラの暮らすサマワは、バスラからも300kmは離れているから、簡単には病院にいけない。今回アルビルに来たので気になっているC型肝炎の検査をうけることにした。
一時に病院に行く。ほとんどの医師はではらっていた。採血をしてもらい夕方には結果が出る。国立病院なので、イラク人はただで検査をしてもらえる。
ホテルに帰ってきて、また、絵を描く。合計12枚の絵ができた。病院に検査結果を聞きに行く。
緊張する瞬間だ。結果は残念ながらC型肝炎に感染していた。医者は、「心配しなくていい。でも食べる物には気をつけて」イラクでは、輸血の際の感染も多いのだ。
ハウラは、明るく振舞っていた。ガンに打ち勝ったのだから、もう怖いものなどないのかもしれない。
「言われるままに絵を描きました。絵の具とか持ってないので、すごく楽しかったです。私の仕事がどれだけやくに立つかわからないけど、日本の為になれば、すごく嬉しいです。」
すべてを終えて夜、イブラヒムと話していると、ハウラが部屋にやってきた。
嬉しそうに、小学校の卒業証書を見せてくれた。
ハウラは、15歳で、9月から中学校に行く。病気の為に3年間遅れた。
でも、その3年間は、院内学級で花の絵を描き続けた3年間だ。思い出がびっしり詰まっている。
ハウラと一緒にチョコレートのデザイン_b0041661_229292.jpg

by kuroyonmaki | 2011-06-30 22:09